大臣として初の海外出張
2024年05月07日
5月3日から5日まで農林水産大臣としてタイ・バンコクに行き、タイ国の閣僚をはじめとする農業・協同組合省幹部と意見・情報交換をしました。3年前の地方創生・少子化対策・孤独孤立対策担当大臣の時も、英国やEU委員会との意見・情報交換のため海外出張が予定されていたのですが、この年はコロナ感染症のまん延により一度も海外への出張はありませんでした。大臣としての海外出張は今回が初めてでした。
【タイの農林水産大臣と真剣勝負】
メインは何と言ってもタマナット農業・協同組合大臣との二国間の直接会談です。タイは果物である「ポメロ」(熊本の晩白柚のような柑橘)とマンゴーの日本輸出に係る品種制限の撤廃をこれまで申し入れて来ています。しかし、日本としては検疫上の課題があり現在、両国の専門家の間で協議を重ねています。今回の会談でも、これらの事を重ねて要求されるだろうとの、予測でした。
【日本産海産物の輸出増を要望】
一方私たちの方は、何と言っても海産物の輸出拡大です。東日本大震災で被災した東京電力福島第一原子力発電所のALPS処理水の放出以降、中国等の国が科学的根拠なしに全ての海産物の輸入をストップさせていますので、わが国としては、ホタテを中心とする日本の海産物の輸出国多角化を各国に働きかけています。今回の会談でも、輸入を禁止していないタイ国に謝辞を述べるとともに更なる輸出拡大をお願いすることとしていました。
また日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)は昨年、友好協力50周年を記念して、東京で「日ASEAN友好協力声明」を出しており、その中で今後の農林水産業に関しても「日ASEANみどり協力プラン」を結び、農林水産関係でも脱炭素社会を目指す事に合意しているため、その確認作業も重要な任務の一つでした。
【一言一句に気を付けて】
タマナット大臣との直接会談に関しては、文言一つ一つについて役所からレクチャーを受け臨みました。話が弾んで、必要以上のことを発言すれば、それが大臣同士の約束事と受け取られ、二国間の誤解を招く原因になります。特に「ポメロ」「マンゴー」については病害虫のまん延にも繋がりかねない検疫に関わる事ですので、安易に受け入れと受け止められる発言はNGです。
【会談は予定時間をはるかにオーバー】
会談は30分の予定でしたが、タマナット大臣、私双方から言うべきことをお互いに発言し、最終的には果物の輸入解禁については「両国の専門家の間でさらなる協議を続ける事」としました。みどり協力プランについては、タイも我が国の「みどりの食料システム戦略」と同じような「バイオ・サーキュレーター・グリーン経済戦略」(バイオと循環と緑による経済回復)を掲げていますので、日本と科学的研究も含めて情報交換をしながら、今後も協力して進めていくことを確認しました。
会談は予定の時間をはるかにオーバーして1時間近くになりました。
【北海道産ホタテの新たな調理挑戦】
このほかにも、日本産とりわけ北海道産ホタテのタイでの需要拡大のために、現地のマスコミやインフルエンサーの方々を招き、新たなホタテ料理の献立をタイのアイアン・シェフ(タイ版の「料理の鉄人」)の協力を得て紹介しました。イタリアン風、タイ風、日本風にアレンジした新たな料理が披露され、皆さん舌鼓を打っておられました。
タイへの日本産農林水産物プラットフォームの総会も開催され、日本の輸入業者や物流業者、タイの小売・卸業界から今後の輸出拡大についての貴重な意見をいただきました。
【午前零時過ぎ日本出発、早朝到着、会談】
今回は非常にタイトな日程で日本の羽田を出発したのが3日の午前零時5分、6時間強のフライトでしたがタイは日本より時差で2時間遅れるため、バンコクに到着したのが現地時間の午前4時半。一旦ホテルで休憩後、大臣との会談に臨むというハードスケジュールでした。
2日目は気温40度の中、日本の農機具メーカーが実証実験している35ヘクタールの農場も視察させていただき、日系企業の力強さとタイ国への貢献度の大きさを目の当たりにすることが出来ました。
【環境負荷低減農業は全世界の方針】
今回のタイでの会談と農業に触れながら➀2国間会談はお互いに国益を背負ってのものだけに、慎重かつ厳しく臨むこと➁欧米も含め世界の農林水産業が脱炭素や地球に負荷をかけない産業へと確実に変換している➂インターネットやインフルエンサーによる情報の存在がいかに大きくなっているか、などを改めて知らされました。
実に意義のある3日間の海外出張でした。
【写真はタマナット農林水産・農業協同組合大臣とのバイの会談と日本企業の農場で活躍する自動運転田植え機】