震災からの時の流れ

2024年04月15日

 
 4月14日は、平成28年(2016年)に熊本地震が起きた日です。午後9時26分震度7の前震が起きます。そして16日の午前1時25分再び震度7が襲い熊本県の上益城郡益城町を中心に熊本市や阿蘇郡など壊滅的被害を受けました。
あれから8年が経過しました。昨日の14日、被害が大きかった阿蘇郡西原村では運動公園の落成式と復興祭が開かれ、益城町では県道熊本・高森線の4車線化の開通式があり復興を祝いました。
 その一日前の13日、私は今回の能登半島地震で大きな被害を受けた、輪島市の白米千枚田(しろよねせんまいだ)や半島の一番奥に当たる珠洲市を視察しました。特に珠洲市は壊滅的な状態で街中は家屋や商店が倒壊したままでした。まさに8年前の益城町と同じ状態でした。
しかし8年経てば熊本のように復興はほぼ完了します。この時期一日違いで、「震災被害真っ只中の地域、能登」と「震災復興の行事が開催された地域、熊本」に身を置かせていただきながら、復興作業への歩みを一瞬たりとも止めてはいけないことを実感しました。

珠洲市は惨憺たる惨状
 能登半島の震災視察は今回が3回目です。1回目は交通が遮断されていたこともありヘリからの視察でした。2回目は輪島市を中心に農林漁業者の皆さんとの意見交換が主でした。今回最も強烈な印象に残ったのは珠洲市の惨状です。震災発生から100日以上が経過しましたが、まだ水道が復旧していないところがありました。珠洲市の道の駅に寄りましたが「つい最近トイレが使えるようになった」ということでした。
 街中を通り蛸島(たこじま)漁港に向かいましたが、道中の市街地は震災発生の当時と全く変わらぬ状態でした。道路のがれきが除去されやっと通れるようになった段階で、両側の家屋、商店は全てが倒壊していました。8年前の益城町の光景と重なりました。泉谷市長は「何から手を付けていいかわからない」と語られました。

蛸島漁港、給油施設や製氷施設、荷捌き所が使用不能に
 能登半島の最先端、蛸島漁港も大変な被害でした。漁船を接岸させる岸壁は、ほぼ海側に倒れているか大きな亀裂が入っていました。給油施設三基の内、やっと一基が16日くらいから使用可能になるようでした。製氷施設も2施設の内、主力の製氷施設が使用不能でした。漁船は燃油と氷がなくては漁場に出られません。
 ただ、2月4日に視察した輪島港と違い、漁港内の海底隆起がなく、漁船が航行できることがまだ幸いでした。氷や燃油をほかの漁港から調達して漁に出ているという事でした。復旧作業は大変な労力と事業費を必要としますが、漁業者の方が不自由なく漁に出れるという事が地域と住民にパワーを与えます。国として全力で復旧・復興作業に当たると、会見の中で述べました。

白米千枚田は今年の作付けはわずか
 世界農業遺産の一つである「白米千枚田」は大変気になっていましたので、13日の午前中に現地に行きました。1004枚ある棚田はまさに地元の人たちが永年かけてつくり上げた「奇跡の田んぼ」と言っても良いほどの「芸術品」でした。日本海に面した傾斜を利用し、一つ一つの田んぼが作られていました。小さい田んぼは風呂敷包みくらい、大きくてもタタミ3畳ほどで、よくもこれほどの棚田をつくり上げ、全てに行き渡る水路を作り、全ての棚田で農作業が出来る農道をつくられたものだ、と先人の努力と知恵と米作への執念にただ驚くばかりです。一日も早く復旧させることが、全国の農家者のモチベーションを高めることに繋がる、と感じました。
 千枚田全体の広さは4ha程度ですが、今年作付け出来るのはその10分の1の40aという事でしたので、来年にはすべての作付けが出来、全国に白米千枚田米が届けられるようにしなくてはなりません。
 珠洲市の農地は左右両側からの地震の圧力により、田んぼの真ん中から片側が2メートルも隆起している田んぼを見させていただきました。被害を受けた中山間地、とりわけ山間部奥地でつくられていた水田をどのように復旧させていくかは今後の課題です。このような地域のコメが美味しい、という根強い愛好家の方々もいらっしゃいます。説明していただいた米作の法人経営の方々も「何とかして水田を復活させ、美味しいお米を届けたい」と言われていました。地元の方々との今後の話し合いが重要になってきます。

最前線の農林水産省職員の方を激励】
 新年度になり、より地元に寄り添いながら復旧作業を進めるため穴水町に農林水産省の現地事務所が設置されました。現地事務所を訪れ「明日14日は8年前の熊本地震発生の日である。復興行事のために出席するが、皆さんが一日一日努力された結果は、必ず復興という形となって結ばれる。その時住民の皆さんの行政への信頼もまた強くなる。その日は必ず来るので頑張って戴きたい。それぞれの職員の皆さんにとっても得難い財産と教訓と自信になる。今後の若い職員に説得力を持って語ることも出来る。健康に注意され、仕事に励んでいただきたい」と私の経験を踏まえて激励をさせていただきました。
写真は倒壊家屋がそのままの状態の珠洲市の中心街】