こども政策でフィンランド視察報告会

2023年08月26日

 24日(木)午後3時半から衆議院議員会館で、北欧のこども政策についての私たちの視察報告会がありました。今回の報告会は、切れ目のない子供政策を実施するために活動されている「こどもと家庭のための緊急提言プロジェクト」が実施したもので事務局長の榊原智子氏(恵泉女学園大学客員教授、元読売新聞記者)が中心になって参加者を募り開かれたものです。榊原氏は私が少子化対策担当大臣の時に取材をされた際に少子化対策に対しての様々なアドバイスをうかがった方です。
そのような縁もあり、私達「地域活性化・こども政策、デジタル社会形成に関する特別委員会」が7月9日から14日まで、特にフィンランドが世界的に誇るこども政策の一つ「ネウボラ」(アドバイスの場の意味)を視察したこと知り、「北欧でのこども政策に関しての視察の感想を聞かせて欲しい」と言われ実現しました。報告者は私と特別委員会の委員長橋本岳衆議院議員が招かれました。
会場には常日頃こども政策や少子化対策に対して活動をされている方々で、大学教授や学生らの約20人が出席され、それ以外にもオンラインで多くの皆さんが参加されました。

ネウボラの進化と担当者の自信と誇りを強調
報告会は私が前の会合で少し遅れたために橋本委員長から始まりました。橋本委員長は厚生労働行政に詳しい議員で、視察全体をホームページのブログに詳しく報告されています。感想と同時に日本の政策との比較もされました。ネウボラについては私と同様の感想でしたが、私が単純に担当者の「利用者の満足度は100%」という説明に感激していたのと対照的にやや懐疑的な見方もされていました。
私はネウボラについては妊娠時から就学前までにおいてワンストップで様々なアドバイスを受ける仕組みと思っていたが、10年前から母子だけでなく家庭の状況や家族全体と母子のことにまでアドバイスの対象が広がっていることに、ネウボラが更に進化していることを感想として述べ、同時に常に電子アンケートで皆さんの感想や満足度を検証しておられることに感心したことを話しました。

なぜフィンランドがこどもを大切にするかの歴史
同時に私は、なぜフィンランドがこどもに重点を置いた政策を進めるのか、その政策であるネウボラがどのような変遷をたどってきたのかをフィンランドの歴史を振り返りながら報告しました。
フィンランドの独立は1917年。第1次世界大戦の最中です。独立直後の過酷な運命の中で国家として何を守らなくてはならなかったのか、「それは若き生命、こどもである」ことを強調しました。
独立5年後の1922年には民間の医師を中心にワンストップのアドバイスシステム「ネウボラ」を民間人の手でスタートさせ、やがて1944年、国家として政策に取り入れることになり1949年には所得制限が撤廃され、全ての国民に対して妊娠から子育てまでの相談出来る仕組みを作りあげたこと。その数は300からスタートして今は国内で800ヶ所に及んでいることなどを報告し、独立の時点で過酷な寒さと所得の低さ、それに伴う乳児死亡率の高さ、人口330万人という小国で何を政策の中心にすべきであるかを考えたとき、それは「子ども」という国民の合意が明確になっていた。国の成り立ちが、例えば「富国強兵」「殖産興業」からスタートした我が国とはかなり違う事など私の考えを述べました。

日本の郵便局数と同じ比率で設置されているネウボラ
そして私自身の分析として、人口約550万人の現在のフィンランドでのネウボラ数800ヶ所という数字を我が国に当てはめてみると、我が国の人口は約1億2000万人。人口で20倍強であることと同じ比率にするとわが国では1万8000ヶ所にネウボラが設置されている計算になる。その数は日本の「郵便局」の数とほぼ一緒である。それほど身近にネウボラがあるという事になるという、見方も披露させていただきました。

学生や大学の皆さんらからの質問
質疑応答では「日本の場合、相談するという事自体へのハードルが高い。なぜそうなるのか」「相談しても相談だけにとどまるケースが多い。若者のとらえ方と相談を受ける側のとらえ方が違う場合が多い」「苦しい状況を相談するためにどこに行けばいいのか、果たして取り上げてくれるのかもわからない」「妊娠していながら認知症の母親の介護もしたという苦しかった経験を持つ。その時、相談窓口がばらばらであった。それは今も変わっていないのでは」「岸田総理が異次元の少子化対策を提唱されているが、(妊娠、出産、子育てと同時に)若者に対しての政策が必要ではないか」などの質問が次々に出されました。
いずれも的を得た質問で現在までの若者、妊産婦、相談機能の我が国の脆弱さを突いたものばかりでした。
私のほうからは「官」と「民」のこれまでの壁、「若者」も「相談に乗る大人」もお互いに一人の人間として意見を述べ、聞くという訓練の足りなさ、若者政策は一連の少子化対策の中で弱いところもあるが、経済環境の改善などは経済界との連携も必要で難しい一面もある。しかし、それを突破していかなくては現在の少子化に歯止めはかからない、などと答えました。

充実した1時間半
3時半から始まった報告会は予定の1時間半をオーバーする勢いでした。私にとっても緊張感のある有意義な報告と意見交換の時間でした。
写真は報告会の会場