「地・こ・デジ特別委」海外視察の報告(デジタル政策編)

2023年07月22日

イノベーション都市エスポー市の取り組み】

    エスポ―市の取り組みを聴く

 フィンランド・エスポー市は首都ヘルシンキに隣接した人口30万人、国内第2の都市です。フィンランドの世界的通信メーカー「ノキア」が買収の危機に晒された2000年代、エスポー市にある大学の学生たちがアメリカ西海岸に研修に行った際、新たに起業する「スタートアップ文化」に感銘を受け、学生たちが新たな起業文化を生み出していくことの重要性を認識し、エスポー市でスタートアップイベント「SLUSH」を開催し、世界からスタートアップ企業に関心を示す人材や投資家を募りました。現在4000社のスタートアップ企業、2000人の投資家、そして事業会社が集まり一般参加者も2万5000人が来場するという一大イベントになっています。
 エスポー市のスタートアップ企業イベントの成功は、➊学生がアメリカのスタートアップに衝撃を受け危機感をもってスタートしたこと➋それを徹底して国やエスポー市が支援したこと➌その際、失敗を積極的に体験させることが成功に結び付くという学生のチャレンジ精神を後押ししたこと➍若い女性がセミナーやプレゼンテーションに数多く参加し全体を盛り上げたこと➎学生がその後も中心となって運営し、ボランティアとしても働いている事などが要因と言われています。
 エスポー市の人口もかつて5万人だったものが右肩上がりで現在30万人です。

市民が集うヘルシンキ中央図書館

  木造の曲線が美しいヘルシンキ図書館

 ヘルシンキ中央図書館「オーディー」はフィンランド独立100周年を記念して建設された前衛的な図書館です。蔵書は日本語も含めて10万冊ありますが、それ以外に、曲線と木造を使った建物の外見、内部は図書だけでなく録音スタジオやディスカッションの部屋、3Dプリンターでいろいろなものをつくれる部屋や寝転びながら本が読める空間とソファーなど多数の部屋や空間があり、本の運搬は自動操縦のロボットが担っています。1階から3階まで螺旋階段が続き型破りな図書館です。

drive Sweden「МaaS」(マース)計画

 「マース」は「Мobility as a Service」の略称で目的地までバスや鉄道タクシーなどをスマホ専用のアプリで「一つのサービスで移動する」ことを目的としており、地域の足を支えるものです。スウェーデンの首都ストックホルムでは、試験的な取り組みや様々な試みが行われていました。不動産企業や自動車産業等20社ほどが参加して、現在マースを確立させるための作業が行われており、都市計画とセットで計画は進んでいました。デジタルと移動と都市計画の融合が出来上がれば、また新たなストックホルムの都市形態が完成するという事でした。

ほとんど女性の責任者が説明

自動ごみ処理シューターを説明するストックホルム市の担当者

 今回の視察で、こども政策やデジタル政策などを説明していただきましたが、「マース計画」以外は女性の方の説明でした。それだけ政策づくりとその後の実行に女性が中心になって当たっているという事を物語っていました。フィンランドもスウェーデンもそこは全く同様でした。北欧の国々の女性の力強さを感じました。

 国家に対する危機感、気候変動に対する大きな危機感を国民が持っていました。特に通常の夏の気温が16℃程度で過ごしていたものが、19℃くらいに上昇するとその肌感覚は大変な異常を感じるという事でした。加えて北極圏の氷が氷解している現実はなお一層国家的危機感に結びついていました。

 様々なことを教えられ、学びました。我が国に照らして考えたとき、私たちは気候変動も安全保障面でも、今後のデジタル化、労働力問題についても危機感が不足していることを思い知らされました。これからの我が国の政策づくり、我が国が直面する課題に対して今回の視察を生かして参ります。