農地政策が今後の日本農業のカギ
2022年12月20日
19日(月)、全国農業会議所の國井正幸会長(栃木県農業会議会長)と全国町村会の荒木泰臣会長(熊本県嘉島町長)と私で今後の農地問題について意見交換をしました。
全国農業会議所は農地の貸借・売買などの許可、不許可を審議する各市町村農業委員会を取りまとめる中央機関です。各都道府県に設けられている県単位の取りまとめ機関である農業会議の会長らが理事として役員を構成しています。このため町村会の首長さん達とは常に連携が必要な組織です。
私は自民党の「農地政策検討委員長」と「農業委員会等議員懇話会会長」をしていますので、私が仲を取り持つ形で昨日の会合となりました。特に、今年の全国町村長大会では、市町村の行政委員会である「農業委員会」に「農業委員」と並行して設置されている「農地利用最適化推進委員」について、農業委員会の機動的な活動の観点から『地域の実情に応じ、市町村長の判断を尊重した運用ができるよう要件の見直しを検討すべき』という要望も掲げられました。このための意見交換会でもありました。
農地は誰でも売買できるわけではありません。食料生産の基盤ですので農地を守るためにいくつかの法律が制定され、開発も規制されています。
まず「農業振興地域の整備に関する法律」により国全体で農地として守るべき区域を設定しています。そして農地の貸借や売買については「農地法」があります。売買は農業者もしくは法人の場合は「農地所有適格法人」という農業者が51%以上出資している法人しか出来ません。(リースは認められています。)
もう一つ「農業経営基盤強化促進法」というのがあり、この法律では農地を農業の担い手に集約化、集積化することが定められています。
農地は国全体で守り、農地の移動は限られた農業者によって売買や貸借されながら、担い手に農地を集約していくというのが全体の構図です。その監視や管理、許可機関が中央の「農業会議所」、都道府県の「農業会議」、市町村の「農業委員会」です。その他に農地のあっせんや紹介を公的に行う「農地中間管理機構」(農地バンク)というのが各都道府県に設けられています。
現在問題になっているのは、➀農業の担い手が減少する中で、いかに担い手と農地をマッチングさせて将来の農地と食料生産を維持していくか➁中山間地が人口減少・高齢化して行く中で、農地の荒廃にどう歯止めをかけていくか➂都市化が進む地域において市街地と農地の線引きをいかにしていくか、などです。
今年の通常国会で「農業経営基盤強化促進法」が改正され、今後は農業委員会などが中心になり、来年令和5年4月から市町村単位で農地と担い手の『将来地図』(目標地図)を作成し、それを「地域計画」として位置づけ、令和7年から実働させるという事を法的に行うという事になりました。今まで「人・農地プラン」として自主的にやっていたものを、法律で強く推し進めるというものです。それだけ農地と担い手の問題は切羽詰まっているのです。
この地域計画が順調に進めば、将来の農地の集約化による整備、そしてそこに耕作する担い手が明確化されることになり、より合理的に効果的に農業が持続的に展開されるという事になります。しかし、そこに至るまでには相当の難問が待ち構えていますので予算の増額と人材の手当てなどで対処し、進めていかなくてはなりません。
この日の意見交換会では、農業委員会の農業委員と農地利用最適化推進委員をいずれは一本化すべきだが、そこに至るまでに整理しなければならない課題などを話し合いました。また農業会議所、農業会議、農業委員会、そして農地中間管理機構の権限の在り方や組織再編についても、私から私見として述べさせていただきました。
農地を集約化して、そこに本当に農業をやりたい人や法人が耕作する、そして地域と一体になって農業、商工業、教育、福祉、医療などをバランスよく振興させ地域の活性化を進めていく、というのが理想の姿です。
そのためにはまず「農地」をめぐる問題の整理から、という事になります。
農地が今後の地域のあるべき姿のカギを握る所以です。
【写真は日本の国土面積の中の森林、農地、宅地の割合】