胸に沁みた野田元総理の追悼演説

2022年10月25日


 衆議院本会議は25日(火)午後1時から開かれ、野田佳彦元総理が、去る7月8日、凶弾に倒れてお亡くなりになられた故安倍元総理の追悼演説をされました。聴きながら安倍元総理を偲び涙が出る追悼演説であったし、同時に政治に携わるものとしての心構えや姿勢、常に社会と向き合う緊張感を持たなくてはならないという事を教えてくれる内容でした。

 安倍元総理と野田元総理が火花を散らした対決の場は何といっても、平成24年(2012年)11月24日の党首討論でした。当時の総理は野田佳彦氏、そして野党の安倍晋三氏は自民党の総裁に返り咲いての討論でした。

 私も鮮明に覚えています。野田総理が議員定数と議員歳費の削減を条件に解散期日を明言すると、安倍総裁は少し驚きながらも「解散するんですね」と果敢に解散の言質をとられていました。そのくだりを「丁々発止のやり取り、それら一瞬一瞬を忘れることは出来ない」と振り返られました。
 
 私もあの時の一挙手一投足を見聞きしながら、政治家の真剣勝負とはこういものかと震えたのを覚えています。歴史に残る党首討論でした。

 その後、解散総選挙が終わり、新しい総理に安倍さんが就任され、皇居での任命式の際には安倍新総理と狭い部屋で一緒になり、安倍総理が、『敗軍の将』野田前総理に歩み寄り「野田さんは安定感がありました。あのねじれ国会でよく頑張りぬきましたね」と優しく声を掛け「私は5年で返り咲きました。あなたにもいずれまたそういう日がやって来ますよ」と励ましてくれたという秘話を打ち明けられました。

 そのような中、もっとも心に残ったのは「政治家の握るマイクには、人々の暮らしや命がかかっています。暴力に怯まず、臆さず、街頭に立つ勇気を持ち続けようではありませんか。民主主義の基である、自由な言論を守り抜いていこうではありませんか。」ということを言われたことでした。

 私たちの言葉や行動の一つ一つに全神経を集中させて、国民の皆様へ向けて発しなければならないのが私たちの使命であるという事を追悼演説を聴きながら思い沁みりました。

 さすが、国家と国民を前にして、孤独に陥りながらも決断を迫られる総理という重責を経験した人にしか分からない胸中である、と感心しました。常にこのような気持ちで与野党は国会での論戦に臨まなくてはならない、と深く感じました。

 やはり「政治」は重たい。

【写真は9月27日、日本武道館で執り行われた安倍元総理の国葬儀】