TPP大筋合意をどう受け止める

2015年10月06日

 昨夜は大村智さんのノーベル賞受賞というおめでたいニュースも飛び込んできましたが、私にとってはTPP大筋合意がショッキングなニュースでした。各国それぞれの国内事情があり可能な限り十分に議論を尽くして欲しい。そのためには今回合意をせずに、後2年後くらいに改めて協議し、その間国内対策を充実させるというのがベターな選択と思っていました。しかしアメリカの中国牽制のために何が何でも大筋合意と言う強硬策が結局通ってしまいました。
 アメリカ型市場経済が太平洋諸国12カ国にこれから更に広がっていきます。もともと私はTPPそのものに反対です。アジア各国は自らの国柄に適したシステムで国家を運営していくべきです。その上で必要最小限度貿易ルールを決めればいい。しかしやはり安全保障なども巻き込んだ大国が考えるルールづくりになっていきます。残念です。
 そこで我が国はそれにどう対抗するか。特に農業分野は深刻です。直ぐにでも対策に移らなくてはなりません。まず3つのことを政府に要求します。
 一つ目は、安倍総理が「日本の美しい田園風景を守る」など情緒的美辞麗句ではなくはっきりと「我が国の農業と農村を国家として守る」と宣言して欲しい。
 二番目は農村部を守るのは競争ではなく共同体であるということに考え方を変えてほしい。農業は水田、畜産、果樹野菜、畑作、施設園芸それぞれにまた作目同士の助け合いと協力と循環があって初めて成り立ちます。そして集落を形成して共同体としての社会が成立します。その根本原理をしっかりと都市型の議員も理解していただきたい。農協組織もその理念から出来上がっています。ですから助け合い、協力体制、共同体の精神と仕組みが崩れれば、それは農村部の崩壊に繋がり自然や国土の破壊になり、日本が壊れていくことになります。工業製品とは根本的に違います。
 三番目は、現在農家の方が一番悩まれていることは、今後規模拡大して行って大丈夫か、息子や孫に後を継がせて生活できるだろうか、ということです。経営体には家族経営、法人経営、集落営農など様々あります。それらの経営体をそれぞれがしっかりと運営していくなら、生活できる、一定の収入が確保できるという仕組みを政策的につくっていかなくてはなりません。それが不備であれば、後継者はいなくなります。後継者がいない産業に明日はありません。
 今後アメリカ型牧場のチェーンファームや最先端技術による野菜生産工場などが登場するかもしれません。しかし海外の投資マネーには、愛国心も愛郷心も、一人ひとりを大切にする心もありません。冷徹なマネーゲームの世界だけです。農村社会の心と根本的に違います。農家や農村集落が自立できる仕組みを必ず実現しなくてはと考えます。
 WTО交渉の合意の時、6兆100億円という莫大な予算を投入したにも関わらず、農業を強くすることは出来ませんでした。農村と都市部の交流施設という名目で現在赤字続きの温泉施設をつくったくらいです。あのような失敗を繰り返してはならない。まさに正念場です。