平和安全法整備をどう理解する
2015年05月12日
昨日は政府が進める「平和安全保障法整備」の自民・公明の与野党協議と同時に自民党でも国防部会、外交部会などの合同部会が開かれ、一つ一つの法律についての説明がありました。
安全保障に関する法律の改正や新法は全部で11本、また関連して技術的に一部改正すべき法律が10本ほどありますので約20本の法律を改正したり作ったりして、安倍総理が言われるところの「切れ目のない対応」をすることになります。
一つ一つの法律を見てみると納得することばかりです。筋は通っています。さすが我が国の頭脳を集めての改正作業や立法作業ですので、説得力はあります。なんら違和感はありませんし、法律として多少無理しているところはありますが、歯止めも利かしてあり、野党が言うような「戦争法案」ではありません。
しかし、一つ一つ見ていくとそうですが、全体としてこれを国民の皆さんがどう受け止めるかの問題です。
中国の脅威が10年前の10倍近くになっています。それは中国の国防費が10倍に膨らんでいるから、また経済発展で中国はどうしても太平洋に進出して、食料やエネルギーの資源を獲得しなければなりません。東シナ海や南シナ海、更に我が国の沖縄・尖閣諸島を含む南西諸島や八重山群島など、中国にとっては太平洋に進出するにあたっての壁になっているところが多数あり、中国としてはこの壁をいかに突破するかが進出のカギとなります。
北朝鮮は今のままの路線を採っていけば、いつ暴発するか分かりません。イスラム世界の宗教的紛争やテロはいつどこでどのようにして起きるか分かりません。それによって石油に資源の多くを頼る我が国のエネルギーが危機にさらされることも十分に考えられます。ロシアだって今はウクライナ問題が優先していますが、オホーツクを含む極東地域は、日露戦争や満州事変、ノモンハン事件が証明するように、ロシアにとって穀倉地帯の倉庫、エネルギー資源の宝庫、ロシアという国のエンジンの一つを担当する地域であり、それは我が国の安全保障と深く結びつきます。
そのような歴史的事実や新たな情勢の変化により、いつ何時偶発的衝突や本格的紛争が起きるか分からない。だから「転ばぬ先の杖」を準備しておかなくてはならないのは、国家の責務でもあります。
しかしです。そこからが難しい。頭では分かっていても、この70年間海外で自衛隊員が一人も紛争の犠牲にならなかったという世界の歴史の中でもきわめて稀な事実の中で、自衛隊が海外に出向いていく機会が増えることは確実ですし、一定の武器も携行します。そして自衛官の犠牲者が出る可能性は確実に高まります。そのとき国民の皆さんがどのように受け止めるかです。
例えばアイルランドという国ではイラク戦争などで三桁の軍人の死者を出しているそうです。ヨーロッパ諸国は数多くの国々がそのようです。しかし国民は平和のためにあえて血を流したとして、受け入れているそうです。現在の我が日本でそのような国民感情になれるかです。戦前は靖国に祭られ神になるという教育が行われていました。そこまで行ってしまうと、もう戦時国家になります。しかし世界の和平のためにあえて犠牲も辞さないというのは欧米では普通の感覚になっています。
果たして、みんなでどのように戦争や自衛隊というものを考えるか、法案の審議は法文の解釈より、国民の考え方と今後の国防と平和とそれに対する貢献という、非常に深い意味を持つテーマになります。
ちなみに「安全保障に関する法整備」は「平和安全保障に関する法整備」と呼称が変わります。みんなで考えるときです。