直轄事業負担金
2009年04月22日
今問題になっている「直轄事業負担金」というのがあります。国道や国管轄の一級河川、高速道路やダム建設など、国が行う事業は一般的に考えると、国の予算で実施されていると思いがちですが、そのうちに3割、あるいは4割は県や市町村が負担しているのです。同じように県道や県管轄の河川など県工事も市町村が事業費の3割ほどを負担しています。
「なぜ国の直轄事業なのに、自治体が負担しなければいけないのか」と大阪の橋下知事が国に疑問を投げかけて「そうだそうだ」とその疑問が広がり今、知事会などからこの負担金の廃止が求められている所です。しかも負担金の中に、事業費だけでなく国の事務所の経費や国の職員の退職金まで入っていたといいますから、なおさら自治体は怒りました。
昨日はその橋下知事ら3人の知事と学者を招いて「総務常任委員会」が開かれ参考人の意見陳述とそれに対する質疑が行われました。委員会室には橋下効果でしょうかマスコミのカメラもずらり並びました。
橋下知事は意識して言われているんでしょうけれどさすがに的確な言い回しです。行政に1年しか携わっていないという強みを生かし、素人感覚でしかも弁護士らしくポイントをついて、直轄事業負担金の矛盾と「欺瞞」を突かれます。野党などは大喜びです。
「自治体が補助金を国に要請するときは膨大な資料を作らなくてはいけない。しかし、国の事業に対して自治体に請求書が来る時は簡単なもの。大くくりで全体額が来るだけ」「国が勝手に事業をやって請求書を自治体に回す。まるで自治体は国の奴隷だ」「関西で道路をどこにつくらなくてはいけないかは関西の知事が一番知っている。だから道路行政は関西の知事会に任せて欲しい。国は外交防衛などもっと直轄事業としてやるべきことがあるはずだ」と辛らつです。行政を経験したことがない知事だから国に対してこれだけのことが言える、と感心しながら聞いていました。
これに対して各党から質問が出ましたがやはり自民党は説得力が弱い。「国が勝手にやっているのではなく自治体と十分話し合いをやっているはずだ」というくらいです。そこにいくと野党はわが意を得たりとばかり「橋下知事の言うとおり。あなたは言葉の使い方の天才だ」と持ち上げます。
これを聞いていて私は、色々な点で整理する必要がある、と感じました。まず直轄事業負担金は地元も恩恵にあずかるわけです。しかも地元の要望で造られているものも多い。それが時代とともに必要性が軽くなったりするものがあります。ダムや土地改良などがその例です。時期をとらえて直轄事業の必要性を見直していくこと。さらに法外な請求は論外ですが、自治体が負担すべき責任もあります。何でもおんぶに抱っこで国に任せて、というのでは全体国家になってしまいます。それに最終的には財源、税源、権限の地方分権です。これが進まないことにはどんなに、うわべの直轄事業負担金だけやっていても、対処寮療法に過ぎません。
まさに国の枠組みを考える、という所にまで行き着きます。今年度の補正予算では負担金を9割軽減するということで予算が組まれていますが、これも向こう3年間です。今後、いたずらに敵味方と区分けするのではなく、これを機にもう一度国と地方のあり方を真剣に論じ合い、実行に移す時期です