天皇と東大

2006年03月05日

・・立花隆著「天皇と東大」(文芸春秋)をやっと読み上げました。上下二巻、一巻が800ページ近い大作です。かなり飛ばして読みましたがなんとか読み上げました。立花隆氏は我が国、当代きってのノンフィクションライターと思います。その綿密な調査と情報収集、思慮深い洞察、どれをとっても舌を巻きます。さすが、あの田中角栄元総理をつぶした人物。これだけの事実を調査してそのからくりを解き明かし、世に問うた人物は他の追随を許さないのではないのでしょうか。
・・その「天皇と東大」です。長い鎖国を終えて日本が近代国家として生まれ変わる時、国家としてのまとまりを「天皇」に求め、人材の供給を「東大」に求めた。その二つが近代国家建設を可能にさせた。一方で否応なく戦争に突き進んでいった道も、この二つとの関連が大きい。明治以降の様々な事件を天皇と東大という視点で綿密に調べていくなら、日本がたどった近代化と戦争への道がよりよくわかってくるのではないか。同時に日本という国の性格も浮かび上がってくるのではないか、というねらいで書かれたのがこの本です。
・・読んでいくと本当に面白いものでした。天皇は明治当初は日本の君主として存在しますが徐々に、君主の絶対化に拍車がかかります。特に日清、日露戦争を経て海外への膨張主義をとりだすと軍部が利用しやすいような天皇制にしていきます。満州事変、1・15事件、2・26事件事件などを経て異常なまでの天皇親政の思想が進められて行きます。一方官僚の養成校としてスタートした東大は、官僚、政治家を政府に送り込む一方で、学問の府として、さまざまな異常な事態への批判や、天皇機関説のような天皇制のあり様を問う学説も出てきますが、学術の世界の弱さを露呈し、それらはほとんど葬り去られます。
・・学術より時の政府や軍部がいかに強いか、左翼より右翼がいかに政治に影響力を与えるかが分かってきます。学術の世界のひ弱さも感じますし、日本の国立大学が学問の為ではなく政治のためにつくられていることも浮き彫りになります。
・・読み終えて、近代化を猛烈に急いだ日本の光と影が理解できますし、日本が陥りやすい落とし穴も見えてくるような気がします。そして、立花隆氏氏の調査能力に改めて驚かされます。
・・やはりいつも短絡的でなく、思慮深くそして出来るだけ海外も含めて幅広い情報を集めながらそのなかで政治は、国家国民にとって最高の判断をしなくてはいけない、という事を教えてくれました。
・・すみません。「天皇と東大」の大作の感化を受けて、ついつい長く、堅苦しく、難しくなってしまいました。大作を読み終えましたので、今度は私が考える今の政治と、これからの政治の在り方を少しまとめてみようかなあ、と思っています。