真のたくましさ

2005年06月08日

私の地元、熊本県菊池郡菊陽町に進出した富士フィルムが、従業員の第1次募集をしました。募集人数は40人強程度。私の知人等にも「願書を提出しました。」という方が50人程おられました。
 先日、応募状況を聞いて驚きました。応募者はなんと約4,000人と達していました。担当者の方も「1,500人か2,000人位まではひょっとするといくかもしれないと思っていたが、これほどとは・・・」と驚いておられます。100人に1人しか採用されません。
 この状況を見聞し、この中に今の雇用に関する様々な問題点が含まれているなぁと感じました。まず、4,000人の応募者のうち8割が現在何らかの会社に勤めている方です。職がなくなって応募してくるのではありません。「富士フイルムという優良企業だったら少なくとも今よりは良いだろう」という思いからの応募です。
この中で問題を整理すると次のようになると思います。

①現在派遣社員や嘱託など雇用身分が不安定で、早く安心・安定の職に就きたいという 気持ち
②今の賃金は安く、仕事に楽しみもない。富士フイルムは今よりも良いだろうという次 への期待感

①は、やはり現代の雇用形態に問題があります。企業が「労働」を「コスト」としか見ていません。それ故コストを低くするためにどういう形態があるのか、ということでたどり着いたのが「派遣社員」やアウトソーシング(生産ラインそのものを外部に任せる)です。企業の論理で人件費の軽減になります。しかし、派遣されるほうは、仕事への誇りも、愛社精神もなくなります。そして最も重要な「勤労」という精神も消えてしまいます。
雇用形態を今後、働く側から見てどういう風に実のあるものにしていくか、重たい課題です。
②はたしかに現職場に待遇などの面で不満を持っている方は多いと思います。そこで、現職場は捨てないで秘密裡に応募して採用されたらもうけもん、ということだと思います。それはそれで結構ですし、①の問題とも絡んできます。
 しかし、このような状況下で私のもとに来られるのはその大半が親達です。息子を少しでもブランド力のある所へという親心でしょうが、あまりにも子供達に甘い親の姿勢が見られます。少子化で子供は自分の元におきたい。そして親子2代3代4代一緒に、もしくは近くにいて暮らしたいと思うのは親の常ですが、それを子供に強く求めるのは子供の自立心や挑戦力を弱めてしまいます。
親は苦しくても、さびしくても子供がもっと自らの生き方を求めて挑戦していくことに手を貸すべきですし、厳しい目で見守る必要があると思います。「可愛い子には旅をさせろ」です。
このような親子のもたれあいが日本全体の慣れあい、もたれあいとなり、日本のたくましさを阻んでいるように思えてなりません。
 今、中国や韓国からさかんに日本が批判されています。また米国とはうまくやっていますが、いつ競争状態になるかわかりません。中・韓の批判に対し、政府も国民も反論はしていますが、本当に競争になったとき我慢し、様々な発想を繰り出すたくましさを私達は今どれだけ持っているのだろうか、と不安になります。
「40人採用に4,000人の応募」市場原理、雇用形態、働く者の心、親子、家庭、国家のあるべき姿など、いろいろ考えさせられるテーマが含まれていることを改めて気づかされました。