予算原案大騒動
2006年12月21日
平成19年度の財務省の予算原案が発表されました。84兆円近くの規模で久々に80兆円台を回復しました。予算編成のシーズンになると、新聞記者の時代大騒動をしていたのを思い出します。
昭和50年代。そのころは大蔵原案と呼ばれていました。今の時期に原案が発表されて、その後クリスマス時期の復活折衝というのが大変でした。まだ予算が贅沢に組めた時代ですので、復活折衝に遣う財源をいっぱい残して、その手柄を政治家に与えるというシナリオが組まれた時代です。原案内示の後、地方から大挙して自治体の長や、各団体の関係者が上京していました。そして国会議員を頼りに、内示がなかった予算を「復活させて下さい」とお願いするという訳です。ホテルを予約するのも大変でした。それからすると今は、お金もないし、また情報開示が叫ばれ、政治家と官僚がともに知っていながら、復活劇で手柄を立てさせる、などというシナリオが通用しない時代になりました。いい事です。
私たち新聞記者は、県庁職員より一刻でも早く情報を取り、朝刊に掲載する、というのが役目でした。
県庁職員は各省庁の担当者を決めて、それぞれに陣取ります。大蔵原案が各省庁に渡され、そこで熊本の川辺川ダムにいくら、高速道路にいくら、土地改良にいくらと情報が分かるわけです。
私たち記者は大蔵省に陣取ります。そしてダムや道路や土地改良等の予算を実際に建設省や農林省と話し合い、査定をした主計官のところに個別に当たります。主計官は実際に各省庁と丁々発止の攻防で個別に事業を査定して、それぞれに組み立てているわけですから、ここが全てを知っているし、握っているわけです。
「あのー川辺川ダムにはいくらついているのでしょうか。九州横断道路はどうでしょうか」と遠慮がちに尋ねなくてはなりません。
主計官は面倒くさそうに、「川辺のダムにはいくら」と教えてくれます。しかし「九州横断道路にはついてないよ。ただしこれは復活マターだ。だから国会議員の先生たちの陳情で復活するようになっている」と教えてくれます。中には誰先生の陳情で復活すことになっている、と議員の固有名詞の名前まで分かっているのがありました。そこまで官僚は計算しているというか、政治家に恩を売る仕組みをつくり上げています。予算編成の舞台裏の一部です。
各事業の予算が分かり次第記事にして朝刊用に送ります。「復活するよ」と教えられたものは「復活折衝で有力視されている」として別記事で送ります。県庁は各省庁から集めたものを持ち寄って県庁の各部ごとに整理するという作業を徹夜でします。しかし、翌日の朝刊を見てやっと全体像や個別に事業額が分かるという訳です。予算を扱う最前線の県庁職員に熊本日日新聞の朝刊を見て改めて予算を知らさせる、というこの快感がたまらなくて、徹夜の取材もなんてことはなかった、というのを覚えています。きっと若くて体力もあったんでしょう。
しかし今はそんな大騒ぎはしません。いい事です。早く知ったからと言ってどうということはありません。劇的な復活劇もありません。大切なことはいかに国民の生活につながる予算を作るか、そして無駄の無い予算にするかです。誰の手柄でもありません。国民全体が考えることです。復活折衝のため地方から上京していた人件費や宿泊費、官僚、政治化への、お土産代などは膨大なものだったでしょうから、これがなくなったことも結構なことです。
予算編成は淡々と効率よく、将来を見据えてやるものと改めて思います。
明朝の辻立ち、会合出席のため7時20分西原です。