取り越し苦労ならいいけれど

2006年11月09日

 昭和史研究の第一人者で、ノンフィクションライターの保阪正康さんが5・15事件のことをサンデー毎日に書いておられ、それを車中で呼んで少しゾッとしました。
 5・15事件は昭和7年5月15日、陸海軍の青年たちが、首相官邸を襲撃して時の総理である犬養毅首相らを殺害した事件です。その後2・26事件等も勃発してそれらを誘引した事件でもありました。
 軍人たちは、地方が貧しい、そして国民みんなが苦しんでいるのに財閥や政治家に腐敗と癒着が横行している。もっと姿勢を正して政治をして欲しいという思いから起こした事件でした。
 その裁判では、軍人たちが「自分たちは悪いことをしたんだからいつでも死刑になる。しかし、今の政治の現実を見よ」と涙で訴えます。
 マスコミも国民世論もこれら軍人たちの行動を褒め称え、また同情を寄せ悲劇のヒーローにしてしまいます。そしてそれは軍部優先の政治を後押しする形となり、生活苦からの満州への移住や東南アジアの植民地化を正当化していく時代に作り変えていきます。国の革命や変革は経済問題、特に地方の貧しさが出発点です。明治維新も石高制が行き詰まり、地方の下級武士たちが江戸幕府に対して立ち上がったのが出発点です。同じように日中、太平洋戦争への道も地方の貧しさから始まります。
 そう考えると、今まさにそうではないか、と思いました。貧しさの度合いは違いますが、中央と地方の格差、また村上ファンドやホリエモンなど一部の投資家による利殖、そして雇用の不安定さ、図式としては維新や戦争以前とあまり変わりません。
 おまけに、北朝鮮の核実験に触発されるように、核武装の議論を何回も言う政党幹部がおり、一方で北朝鮮の拉致問題に対して放送局に、放送命令が出せるようにもなりました。また総理大臣は満州帝国の建設に寄与した元総理の孫です。
 あまりに環境が似ているので、ゾッとした所です。今は選挙がありますので少しは違いますが、小泉マジックのように国民が戸惑うような選挙もあります。何が本当に政治を正しい方向に導いているのかは難しい。
 アメリカはブッシュ大統領の共和党が敗北しました。イラクとの戦争に疲れたようです。国民の感性はまだ正常と感じました。日本もくれぐれも感情的、一時的なものに左右されないように、と願いたい。自分自身も努力します。
 明朝の辻立ち7時20分立野。