「地・こ・デジ特別委」海外視察の報告(こども政策編)

2023年07月16日

フィンランド2日間、スウェーデン1日間の視察』

日照時間が少ないためガラス張りの住宅で日光を採り入れるヘルシンキの住宅街

 フィンランドは、こども政策や女性活躍の先進地ですので、ネウボラの現場で活動の実態を聴きました。新たな街づくりも行われており「街づくりのコンセプト」を聴きながら建設途中の街を歩いて回りました。児童養護施設にもお伺いして、どのような実態の児童を預かっているのかなどの話を聴きました。責任者や現場担当者として説明していただいたのは、すべて女性の方でしたので男性の方ははどこで働いているのだろうと思うくらいでした。
 一方、スウェーデンでは児童の養護施設や、移動手段を総合化デジタル化する「MaaS」についての取り組みを聴きました。

緊張感張り詰める北欧の国家』
 まず、大前提としてフィンランドやスウェーデンなど北欧の国家がどのような歴史と地政学上に置かれているかを知らなければ、北欧の優れた政策を、そのまま日本に持ってきても生きた政策になりません。その国家が置かれた環境によって国民性や国柄が出来上がってきます。

強国に挟まれた緊張感と少数人口と活動日数』

  フィンランド、スウェーデンの地政学図

 スウェーデンもフィンランドも東はロシアに接し、南には強国ドイツがありました。常に、この2大国の脅威に晒され、これまで中立国を保ってきました。フィンランドは現在でも徴兵制を敷いています。今回のロシアによるウクライナ侵略で中立を保つことは難しいと判断し、NATOへの加盟を申請し認められました。それほど国家としての緊張感を強いられています。
人口はフィンランド550万人、スウェーデン1050万人です。夏は午後11時くらいまで明るく白夜が続き、冬はマイナス30度、暗い一日が続きます。このため男女を問わず国民全員が働き、特に夏の働ける期間に働かなくてはなりません。消費税が20パーセント以上で、財源は福祉や教育、こども、女性政策、福祉に充てられますので、将来税金を払ってくれる人材を育てるという意味で、若者やこども、女性への政策が手厚くなります。そこに北欧の国ならではの政策の力点の置き方が特徴として表れていました。
 歴史は浅くフィンランドの独立は1917年ですので独立後まだ100年です。それまではスウェーデンの一つの州であり、東はソ連が支配していました。スウェーデンはバイキングがそれぞれに各地を支配しており現在の原型となるスウェーデン王国が誕生したのが1050年ころと言われていますので、日本でいえば平安時代末期という事になります。
 地政学や自然環境、歴史、文化のルーツなど全く日本と違う国家です。それを頭に入れながら、それでも学ぶべきところはしっかりと学ばなくてはならないと思いました。

妊娠から修学善まで助言の「ネウボラ」』

ネウボラである「カンピファミリーセンター」

 「ネウボラ」(助言の場)はフィンランドの全ての自治体に設置が義務付けられています。保健所と児童相談所、保育所などを合体したような施設です。消防などと同じような公的サービス施設です。妊娠を届けると専属の担当保健師が付きます。その保健師が常に様々な相談に乗ります。出産のとき病院に行く以外は、ほとんどネウボラで様々なアドバイスを受けて出産準備をして出産後は育児指導を受けます。
 以前フィンランドは冬の厳しい寒さもあり、乳幼児死亡率が高かったことからこの制度は発足しました。
10年前からはさらに進化を遂げ、「ファミリーセンター」として祖父母を含め家族全体の生活環境をチェックし助言するシステムになっていました。それぞれの分野における専門家がアドバイスする仕組みになっています。個別に相談する個室がいくつも備わっていました。
 ネウボラサービスの利用者の満足度は100%という事でした。

SOS子どもの村フィンランド』

     SOSこども村で説明を聞く

 「SOS子どもの村」は、子どもの権利を推進する国際的な児童保護団体です。日本にも「子どもの村Japan」があります。フィンランドの子どもの村は1962年から活動しています。里親制度を必要とする様々な年齢の子どもたちに対して個人の家庭で面倒を見たり、児童養護施設では様々なケアサービス提供しています。週末里親や児童養護に関する相談などサービス体制は多様でした。スタッフは公務員扱いです。
 フィンランドには100万人の子どもがおり、そのうち10分の1の子どもが児童養護の支援を必要としているという事でしたので、私が「割合としいては多いですね」と質問すると、どんな些細なことでも相談する仕組みになっているので、このような割合になるという事でした。一人一人の子どもをいかに大切に育てるか、という考え方が浸透していました。

 

児童養護ファミリーホーム』=スウェーデン・ストックホルム市

   スウェーデンの養護施設での説明

 親のいない児童、あるいは麻薬や犯罪に手を染めた児童に対して家庭的なケアをする施設。親とともに住む場合や児童が単独で住む場合などケースは様々です。それぞれに臨床心理士などの専門家が付き生活指導をする。一方で一般家庭のファミリーサポート制度もあります。ファミリーホームになりたいという希望者も多く、それに対してストックホルム市がその家庭の過去の調査などを行い資格審査をします。認証されれば市から一定の支援金が交付され、指導要領に沿って一般家庭と同じような生活環境で過ごすことになります。ファミリーホームは一定のステータスであり、地域社会では尊敬の眼差しで見られるといいます。
 移民問題が深刻で移民同士での争いや犯罪を重ねることが、こどもにも影響していることから、これらのこども政策がとられている面もあると感じました。