つくば市にある農研機構を視察
2021年10月01日
30日(木)、茨城県つくば市にある「国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構」(農研機構)を視察しました。農研機構は我が国の農業と食品産業の発展のために、農業のスマート化や穀物、野菜などの新たな品種(種子)の開発、遺伝子研究、食品の流通や加工技術の向上など、農産物誕生から育成、生産、流通や販路までの技術開発、改革、改善、拡大を目指し、「農」に関する全ての研究をしているわが国最高の研究機関です。実証ほ場を含め350ヘクタール以上の広大な敷地を有し、全国で約1800人の研究職員が働いています。
農研機構を視察したのは、まち・ひと・しごと創生担当大臣として農業は地方の活性化に欠かせないものですし、特に今後、世界の流れが脱炭素社会になって行く中で、農業にもカーボンニュートラルが求められ、そのことが世界のルールになって行きますので、その流れに先行した研究がどの様に行われているか、そして農業の担い手が減少する中で、スマート農業への取り組みがどこまで進んでいるかを知るためでした。
午前11時45分に大臣室を出て常磐高速自動車道をひた走り午後1時に現地に到着しました。早速、久間和生理事長より現在の重点研究などを含め、農研機構の全体の動きについて説明を受けました。具体的には、甘蔗の輸出に関しての輸送途中の損傷を防ぐための温度管理や「もとぐされ病」など新たな病気への予防対策、スマート農業に向けての自動運転トラクタ―開発、世界における種子の開発攻防などを聴きました。
その後、各ほ場や研究室の現場に足を運びました。何しろ広大な敷地ですので車の移動だけでも時間がかかります。
スマート農業では無人のトラクターがソフトを組み込むだけで、複数の田んぼをまたがって耕運して行く様子を見学し、果樹のほ場ではモモなどの樹木を省力化し易いように逆三角形の樹形に仕立て、消毒や摘果、収穫の際に自動走行の車両がその間を通りスムースに作業を行い30-50%の労働時間を削減できる現場を紹介されました。
イチゴなど表面が柔らかい果物は国内外への輸送の際に振動で傷がつきやすいため、衝撃を極限に抑えるための包装技術の開発も進んでいました。
遺伝子バンク(ジーンバンク)では20万を数えるコメや大豆の種子が保管され、遺伝子のゲノム研究をしながら気候変動や病害虫に耐えうる新たな種子の改良に取り組んでいる世界一の装置も見学させていただきました。
約3時間半の視察でしたが、それぞれに世界的にもトップクラスの研究が行われていました。農業技術のわが国の水準の高さに一安心しましたが、欧米でも種子の開発などは国策として進められ、官民一体となって研究が行われているという事、この分野のグローバル競争は一層激しくなっている様です。
今後、世界全体の人口増加で食料が不足すると言われています。一方でカーボンニュートラルに向けての世界の標準ルール作りが進みます。気候変動や病害虫により強く、しかも生産力の上がる種子の開発や育成方法の改善、そして主な作業が自動で進むスマート農業化などがますます求められます。
そのような競争の中で、我が国の地方を創り出して行かなくてはなりません。先にNTT東日本を視察した際のデジタルによる地方創生と同様、農業においても技術が地方を変えて行く大きな要素である事を実体験しました。