平和安全法制についての私の考え

2015年06月25日

 国会は95日間延長されました。現在審議中の「平和安全法制」を可決成立させるための延長です。このため、この法制についてかなり長くなりますが私の考えを報告します。
 この法制は我が国にとって、どのような事態があっても自衛隊が後方支援のために出動することによって我が国の平和と安全を守る、という目的のもとに複数の法律で構成されているものです。ですから「備えあれば憂い無し」ということで、法の整備は必要です。
 「安倍総理は急ぎすぎる」という声を聴きます。確かにそうかもしれません。しかしいずれこのような法の整備を必要とする時期が必ず来ます。であるなら、この分野は安倍総理にしか出来ないと考えますので、今国会で成立させるべきと思います。いずれ「あの時、法の整備をしていて良かった」という時が来ます。

 この法制は、①平常時、②グレーゾーン、③重要影響事態、④存立危機事態、⑤武力攻撃事態の5段階に分けての整備です。
 ①平常時は、アメリカ軍などと共同で監視活動などをします。
 ②グレーゾーンは、漁民の格好をした武装勢力が島を占拠しようとする場合など、海上保安庁では無理ですので自衛隊が出動します。
 ③重要影響事態は、台湾海峡で紛争が起きたとします。台湾、中国共に我が国の同盟国ではありません。しかし我が国にとっては由々しき事態ですので、アメリカ軍が出動し、我が国の自衛隊が後方支援をすることになります。結果として我が国を守ることになります。
 ④存立危機事態は、もし朝鮮半島で武力紛争が起きれば、韓国は我が国とアメリカの同盟国ですので日本人救助などでアメリカ軍を支援します。
 ⑤武力攻撃事態は、我が国に対する武力攻撃への予測と切迫がありますが、もう一歩進んで攻撃が発生したなら、これは個別的自衛権ですので自衛隊の武力行使が認められます。

 この5段階に対して法律の整備をしておけば、いかなる場合にも対応できます。また対応できるように同盟国と共同で訓練もする必要があり、今以上に防衛力も技術も上がります。それが他国に対しての抑止力にもなります。
 ホルムズ海峡に機雷の掃海に行く、ということがよく言われますが、本当に日本の石油輸入に支障をきたすなら、これは掃海しなくてはなりません。しかし、それはその時々の判断です。

 日本はなぜあのような無謀な戦争に突入して、そして310万人もの犠牲者を出し、原爆を落とされ、国内の200の都市が空爆を受け焼け野原になったのか。
 ひとつは、同盟国がいなかったということです。日本対50ヵ国の連合国の戦いでした。いかに一人で強がっていたかです。もちろんドイツ、イタリアとは3国同盟を結びましたが、これは戦争に突入するに当たっての作戦で、日ごろから同盟を結んで訓練していたわけではありません。どのような国でも自分の国だけでは国は守れません。
 二つ目は、日本が野心満々でした。満州を植民地にして、日本のエネルギー源として、アメリカと戦い西欧文明に鉄槌(てっつい)を下す。そして中国などは一撃を加えればすぐ降伏する、などと息巻いて、軍部が全ての政治を動かしていた。いかに世間知らずで、独りよがりで、いい気になっていた「夜郎自大」であったかです。これも軍部に政治を任せたためにそうなってしまったのです。
 三つ目は、日露戦争以来、謙虚な外交をしていなかったことです。日露戦争勝利ということで、外交そっちのけで軍備拡張に走りました。しかも第一次世界大戦を経験していない日本は日露戦争の延長線上で軍備、軍略を進めていました。しかし第一次世界大戦で戦争のやり方は大きく変わっていたのです。空爆などを中心に装備も戦い方も進化していたのに、日本だけが日露の栄光にすがっていました。

 ですから同盟国を広く持つということは大切です。アメリカ、韓国、オーストラリア、フィリピンなどいろいろな国があります。そして常に共同訓練をすることも大切なことです。その前に外交に全力を尽くすことが求められます。今の日本を取り巻く情勢はアジア、中東、北方共に厳しいものがあります。ですから外交が第一です。そして、いざという時の備えが必要です。
 野党が言うような「戦争法案」や「徴兵制につながる」というのは現状や時代の変化を無視した言い方です。もちろん自衛隊にはリスクはつきものですが、自衛官は覚悟を持ったプロフェッショナルです。日本の自衛官の士気と技術は高い。私たちはそれに見合う名誉と保障をしっかりと法的に位置付けなくてはなりません。

 憲法との話しはこれはまた別の論議です。第9条では「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、これを永久に放棄する」。そして、この「目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と書いてあります。
 しかしながら、憲法の前文では「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」と書かれ、「自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務である」とあります。
 つまり、世界の良識ある民主的な政治体制をつくるために、それぞれの国が汗をかくことは国家としての責務である。そのために我が国も名誉ある地位を占め先頭に立ちたいと考えている、という意味ですので、この意味から考えるとやはり我が国が世界のために汗をかかなければならないということになります。
 大切なことは、独りよがりにならないで仲間をつくること、外交でいろいろな課題を解決するために努力すること、このことを肝に銘じていれば戦争には至りません。一方で、国を守るための法整備、いざという時、そして抑止力としての備えと訓練は必要ということになります。これが現在の私の考えです。