悩ましい消費税論議

2015年09月16日

 消費税は平成29年度から現在の8パーセントを10パーセントに引き上げます。その際、生活必需品など一定の商品に軽減税率(8パーセントのまま)を適用して負担感を和らげるという協議が自民党と公明党の与党間で交わされました。
 しかし実際に軽減税率を適用しようとすると難しい問題が出てきます。線引きをどうするかです。食料品と一般的に言っても、生鮮食品、冷凍食品、加工品、インスタント食品、店頭でのお持ち帰りおみやげ食品、新聞も一般紙、スポーツ紙、夕刊紙、業界紙と様々です。線引きが難しいのと仕入れ段階から税額票を添付しなければならない(インボイス制度)、というわずらわしさが出てきます。
 そこで財務省は、酒類を除く全ての食料品を軽減税率の対象にして、再来年にはスタートしているマイナンバーカードをレジでかざせば食料品のみ峻別され、一定額(4000円か5000円)が口座に還付される、という制度を発表して与党会議にかけました。
 しかし「この制度は軽減税率とは基本的に違う」「その場でマイナンバーカードをかざし、後で一定額が戻って来ると言っても、その場の負担感は変わらない」、「マイナンバーカードを使わない高齢者などはどうなるのだ」などの意見が与党内から続出して暗礁に乗り上げかけています。
 私も自民党税制調査会の幹事メンバーの一人として頭の痛い問題が浮上した、と思っています。いまから軽減税率商品の線引きを検討してもなかなかできるものではありません。様々な業界から「うちの分野は軽減してくれ」という陳情合戦になり収拾がつきません。あまり軽減する商品幅を広げると、税収が減少し社会保障費に回せません。かといって今実施している低所得者の皆さんに6000円還付している「簡素な給付措置」を続けることは公明党と協議した「軽減税率導入」ではなくなります。
 あちらを立てればこちらが立たず、の八方塞(はっぽうふさがり)状態になります。結論までたどり着くのはなかなか難しい。一方で医療費、年金、保育費など社会保障費の財源確保は待ったなしです。
 であるなら今実施している低所得者に6000円還付する、という「簡素な給付措置」を少し拡充するか、それとも精米や生鮮食品などごく限られた食品のみを軽減税率対象とするか、どちらかしかないような気もします。